No.186 過去の淫ら(R18)│No.188 自尊心を養う散歩と意外な客人

2025年11月09日

No.187 美魅の挑戦【鬼下民】episode3

美魅「帰ったで」

美魅はただそれだけ報告すると疲れた表情のままその場に立つ。

パトはその美魅を見て質問する。

パト「苦しいか?」

パトから見て美魅は自分よりも弱い相手、無抵抗な相手に一方的に攻撃するのは気が向いていないのではないかと感じていた。

美魅「はあ?うちは全然問題ないわ、それにまだ39ポイントやで、まだまだ殺さな出世なんて出来へんのや」

パト「そうか、美魅、非情になれとは言わない、思う所があるならそれと向き合う事だ、無視していいものじゃない、普段の訓練に比べて疲れる原因は何か?現場での緊張、ストレス、果たしてそれだけなのか、もしくは他の要因があるのではないか、そう考えていくんだ、今の美魅を見ていると日頃の訓練よりも疲れているように見てたんだ、勿論本番だからっていうのもわかる、だがあいつらは俺と普段訓練している美魅にとって疲れる相手だったか?俺はそんなに弱いか?」

美魅はパトの言葉を素直に聞いていた。

美魅「・・・疲れたのは別に気を使ってたからやない、そうやな・・・」

美魅は自分の今の状況を考える、どう言葉にすればいいのか考えている様子だ。

美魅「別に個々を襲う時はこんな感情にならへんかった、確かに隠密で気をかなり使って疲れていたのはあった・・・せやけど今回はどこか違う、集団相手を殺してうち一人がその場に立っていた、その現状が凄く・・・孤独に感じたんや」

美魅は自分の気持ちをなんとか言葉にした、そして出て来た言葉が【孤独】。

パト「孤独か、言い得て妙だな、確かに強者は最終的にはその場で孤独になる、そうか、美魅にとってその殺戮の現場は祭りのように高揚していた、そしてそれが終わり、自分だけしか残っていない現状を知って一度冷静になり疲れが出た・・・なのかな」

旅行やテーマパークに行った時の状況に似ている

人は何かをして楽しんでいる時、疲れを感じにくい、だが一度遊び終え、家、主に自分の肉体や精神が休まる場所に戻った時に疲れが一気に出て来る感覚、脳のスイッチが切り替わったような虚無感や脱力感、美魅はその感覚に近いと言った。

パト「美魅、今日はもう休め、明日別の場所に向おう」

美魅「どこで休むんや、第十一園は休む場所なんて・・・」

美魅は自分で喋っていて途中で気が付いた。

美魅「いや、あるな、うちが殺したこの村の家が・・・」

パト「そうだ、美魅、もしお前が望むならこの村は美魅の物になるんだ、それだけの強さと戦いを繰り広げたんだぞ、美魅が」

美魅は眼を見開く。「ここ全部がうちの好きにしてええんか・・・」とボソっと呟く。

美魅「・・・とりあえず休むで、うちはもう疲れたんや」

美魅は村で一番綺麗な建物を選びそこで休む事にした、
それは元々住んでいた鬼族が美魅を殺すために抜け出した家、だからこの家に死体や返り血はない、
だがパトや美魅にとってこの家はボロ屋であり、とてもじゃないが衛生面が整っているとは言えない家だった。

美魅「ここで風呂に入るなら水を布に浸して拭くしかないで」

美魅は家の中にある比較的綺麗な布をパトに手渡す。

パト「じゃあ先に美魅が身体を拭いておいで、かなり疲れてもう寝たいだろ?」

美魅「そうやな、主も別に家の中ならどこででも拭いててえんやで、シャワーとか湯舟とかないんやからな、そもそも溜めて置ける水だって満足にない、綺麗な水なんて貴重品なんや」

パト「ああ・・・」

パトは美魅にそう言われると個室に入りそこで身体を拭く。

・・・・・・
パトと美魅は身を寄せ合うように眠っている。
水で身体を拭いたため体温が下がっている二人は身を寄せ合い、お互いが向き合う形で寝る事で対応を確保しようとしていた。

美魅「うちは温いけど主はええんか?」

美魅は頭から足までパトの内側に収まっていた、パトは美魅に腕枕をし、もう片方の腕を頭を撫で気を落ち着かせていた。

パト「俺だってこういう環境は慣れてる、それに今頑張っているのは美魅であって俺じゃない、一番体力を回復してほしい子に一番休んでて欲しいんだ」

パトは美魅の頭を優しく撫でる、美魅はその手のぬくもりに心を落ち着かせ眠りに入る。

パト「・・・」

パトは考えていた。

パト(美魅は孤独と答え、俺はそれを娯楽特有の疲れと例えた、けどそれは寂しさもある、ずっと美魅は一人だった、そして俺と出会い、エテルというほぼ同じ歳の女の子の友達が出来た、帝国で学校に行かせてあげる事で沢山の友達を作ったとも聞いていた。月花の九騎神使の子達とも仲が良かったと聞いて凄く微笑ましかったしね)

だからこそパトは不安を感じていた。

パト(美魅は・・・本当は殺し合いじゃなくて仲良くしたいんじゃないかな、ここの制度の都合上どしても相手を殺さないと出世できない、そして立場が弱いままだと自分の意見すら言えず、生殺与奪も自分で選ぶことが出来ない、美魅は今その葛藤の中に居るんじゃないか、そう考えてしまうんだ)

本当は殺したくない、仲良くしたい、だけど殺さないとその夢は実現しない

そんな最悪の矛盾を生んだ現状が美魅の中で違和感として残っているのではないかと
だが美魅自身そこに気付いていないのではないかと。

パト(平和を望むために戦争をする・・・そんなジレンマと同じってわけか、これは武力による戦争だ、勝者の方針がこの国の方針になる、強い者が発言した言葉で弱い者達が無償で言う事を聞いてくれる【戦う必要がなくなる】そんな歪んだ正義が美魅の中にあるのではないか・・・と、考え過ぎか)

パトが考えていると美魅は既に眠っていた。

パト(あと何日掛かるかわからない、でも俺は美魅の主であり保護者なんだ、しっかり導いてあげないとだよな)

・・・・・・
そして数日が経過し、美魅は他の鬼下民階級の鬼達を撃破していった。

そして100ポイント取得に成功した。

パト「帝園に入って大体3週間くらいか、結構長かったな」

美魅「せやな本来なら生活しながら地道にポイントを稼ぐもんやからな、時にスピード出世を狙った奴が大量虐殺をするっていうのも珍しいわけじゃないけどな、早く済ませようとしても時間は掛かるもんや」

パト「それでどうするんだ?昇格戦、やるか?」

パトは美魅に提案する、だが美魅は浮かない顔をしていた。

美魅「うち一度だけ格上と戦ってみたいわ、正直今の内はどれだけ強いのか・・・それを知りたいんや」

パト「そうだな、正直次の階級である【鬼中民】の実力は俺も知らないからな」

美魅「鬼中民から人数が限られてくる、つまり一つ階級が上がるだけでも大出世なわけや、こんな広大な大地に鬼中民はたったの約16000人しかおらんわけや、日本の人口に直してもその狭い門やって事はわかるやろ」

パト「そうだな、そう考えたら昇格出来る鬼はたったの4万人、それに対して鬼族の総人口は・・・」

美魅「それは知らんな」

パトはミールを呼ぶ。

ミール(おおよそ9800億人ですかね、鬼族はそこまで多くは作られていませんので)

パト「9800億だって、ってことは1%未満の超エリートって事じゃないか、美魅、本当に挑むのか?なんか数字だけ聞いたらかなり強いんじゃないかって不安になったんだけど」

美魅「ビビってる場合ちゃうで!せっかく挑戦権を得られたのに次に行かんなんてアホやろ!」

パト「待て!冷静になって考えてみろ、9800億の鬼族が居て日々そこまで変動していないって事はそれだけ鬼中民の強さは秀でているって事だ、これが1億程の人口ならまだ向上心が少ないやつが多いのかって納得するけど、9800億も居てここまで殺伐とせず平穏に階級が変動しないのはおかしい」

美魅「ビビりやな、そんなもん簡単な話や100体も殺せないって事や、そもそも鬼族は頭が悪いんや、教養なんて皆無や、算数だってまともに出来ない馬鹿ばかり、1+1なんて簡単な問題も2年前のうちだったら絶対に応えられへんかった、それがこの世界の現状や、うちみたいに教養を得て作戦を立てる頭がないんや、やからとりあえず殺して、殺されてを繰り返して100ポイント溜めてをやって来てるんや、効率なんてもんこの園には存在せえへん!」

パト「そ、そうか、そんなレベルなのかここは」

美魅「そもそもここは常に食糧難や、まともにご飯も食べれへん奴が殆ど、やから共食いやって当然のように起っとる、うちはそれすらもありつけなかった、やから土を、虫を、微かに生えてる雑草を・・・食べて来たんや、弱い奴は共食いにも参加出来へん、むしろ狩られるだけや、ほんで肉体だけは治る」

パトは美魅を強く抱きしめた、当時はただの成り行きで面倒を見る形だった。
だが今は違う、あの時に美魅に出会ってこうやって保護出来て本当に良かった。

パト「美魅、今の生活は満足か?」

美魅「満足?当然や、毎日当たり前のようにご飯が出て来る、当たり前のように勉強が出来る、当たり前のように寒い時は温かい部屋、暑い時は涼しい部屋におられる、お風呂にも毎日入れる、周りに気を許せる友達がおる、それでなんで満足出来ないや?意味がわからへん」

パトは美魅を強く抱きしめる。

パト「今更だな、こんなこと今まで聞いても来なかったから全然美魅の居た環境に対して想像出来なかった、でもこうやって聞いて、美魅が満足しているなら俺は凄く嬉しい・・・」

美魅「今更何言うとんねん、でもやからわかるんや、きっと鬼中民はそんなに強くない、うちは確かに突出した力はない、所詮は子供や、真鬼縛解してやっと戦える程度や、やけど今のうちには知恵がある、技術がある、本能だけでは補う事が出来ない強さがある、多くの敗北もしてきた、多くのタイプの人と何度も戦ってきた、やからこそこの経験は実力以上の物を発揮する、そううちには確信があるんや」

パト「はは、父さんみたいな事を言うんだな、経験に勝るものはなし、かそうだよな、筋力が強くても上手く扱えなかったら意味がない、知恵だけあってもそれを行使出来るものがなければ意味がない、両方があってこそやっと力としても発揮出来る」

パトはいつもこう考えている

力が50 知恵が30だった場合、実際に発揮させる力は30程度に収まるのではないかと

力80 知恵50 だった場合は実際に発揮される実力は知恵の50に影響されて力は50までしか発揮出来ないと

アンバランスでは互いの力を存分に発揮出来ないのではないかと、パトはこの理論を常に頭の中で組み立て教育してきた。

パト「わかった、なら一度鬼中民と戦ってみろ、だけど負けそうになったら今回は俺が仲介に入る、だがそれは美魅を逃がすためだ、代わりに俺が鬼中民を倒すって事じゃない」

美魅「はあ!何勝手な!」

パト「勘違いするな、美魅を守るためじゃない、俺だって鬼中民の実力は把握しておきたいんだ、今後鬼族と契約をするとなれば最低でも鬼中民クラスの連中を相手にして倒したい、俺の都合だ。」

美魅「主はうち以外の鬼族も仲間にする気なんか」

パト「当然だ、鬼族と契約すれば俺の身体能力が向上する、以前俺が帝園の全園の従属大量契約をした話をしただろう、その中には勿論美魅と同じ【鬼下民】の子もいる」

パトは以前契約方式が【討伐式】の従属を中心に多くの契約を得た、そして強化された

精霊族はLv.1を10体
怪人族は一般妖怪を20体
鬼族は【鬼下民】を20体
邪人族は【五等兵】を10体

それ以外で言えば
獣は4体
天使族は【天使】を10体
龍族は4体
聖人族は【五等聖】4体と【四等聖】1体
機械族は4体
魔族は6体

パトは少なくとも88体の従属契約に成功し、それだけ力も得ている、

パト「わざわざ召喚する事もないし、出してないだけでそれなりの従属は既に居る、でもこれからだって力をつける、実戦経験を得るために戦い続ける、真名開示式や任意式だって結局のところ力で屈服させてるなら認めてもいいっていうほぼ討伐式と変わらない契約だって事もわかってるしな」

美魅「なんかずるいわ・・・」

パト「でも美魅はそんな俺を超えたいって努力してるんだろ、なら頑張れ、俺も美魅が強くなれるように傍で見ていてやるからさ、そして【鬼下民】で契約した子が大出世して強くなった!って言わせてくれよ、その方が俺も誇らしいしさ」

パトは美魅の頭を笑顔で撫でる、美魅は複雑そうな顔をするが、パトの笑顔が自分にだけ向いている現状、ここまで我儘を言っても向き合ってくれる、それだけでも美魅の気持ちは充分に満たされた。

美魅(多分これが愛情って奴なんやろうな、ここが居場所なんやって身体が、脳がそう納得しとるんや、エテルも最近家族愛について考えていたって聞いてたし、うちも似たような感覚になってたかもしれんな)

美魅にとってパトは当初と変わらず憎い相手だ、だがそれ以上に我儘を言っても許してくれる、心を開ける大事な存在だ。

美魅「よし、なら探すで!うちが鬼中民を倒しても文句言うなよ!」

パト「言わない言わない、そもそも美魅で倒せるなら俺でも倒せそうだしな~」

美魅「うっざ!ええわ!ここで一気に強くなって主ビビらしたるわ!うちが勝ったらどっちの稽古かわからんなるな~」

パト「俺に勝ってから言えっての!」

パトと美魅はそう話しながら【鬼中民】を探す。

No.186 過去の淫ら(R18)│No.188 自尊心を養う散歩と意外な客人