No.120 奴隷の少女 episode1│No.122 黎明の陽射し

2023年09月04日

No.121 赤字経営 ネス工房

ネス「また赤字・・・毎日仕事してるのになんでっすか・・・」

ネスは毎月行っている決算をしていた、その金額を見て気分が下がっていた。。


ネス「経営に向いてないんすね、いっその事どこか経営が上手い妖怪の所に行って一緒に働かせてもらうっていうのも手っすね、でも求人なんてあるのか・・・そもそも妖怪族はほとんど手に職を持って生計を立ててるっす、自分の事は自分でしろって考えばかりの一族っすから誰も雇ってくれないっすよね・・・」

ネスは深いため息をついた、誰かに頼れたらと考え、主であるパトが頭に浮かぶ。

ネス(主に相談しよう、そうすればもっと仕事を斡旋してくれるかもしれないっす、でも仕事してるのに赤字って変な話っす・・・)

・・・・・・

パト「やっと自分の経営の下手さに気付いたか、遅すぎる気もするけど」

ネス「主、私なんかに時間を取られるのが不愉快極まりないのは承知の上なんすけど、このままだと飢え死にっす、どうか仕事をくださいっす!」

パト「いやいや、ネス、ネスは仕事量としては充分過ぎる、問題なのはお金の設定だ、そこがほとんどどんぶり勘定だからマイナスになるんだよ」

ネス「どんぶり勘定ってなんすか?なんか旨そうっすね」

パト「大体これくらい?でお金を決めてるってことだ、本来なら自分の売り上げが出るように値段を決めておくんだよ、1仕事何ミル、って、確か人形修理とか武器修理、制作でもある程度値段を決めてただろう、あれはどんな根拠で決めてるんだ?」

ネス「大体これくらいって感じっすね」

パト「馬鹿!普通は武器作成なら、制作の工程に掛かる時間、技術料を含めたうえで計算するんだよ!そのうえで妖怪族の間の大体の定価を把握するんだ!例えば妖怪族の間で10000ミルで武器を作られているならそこからスタートだ!そこからどうギリギリまで売り上げが出る数字で他のライバル店を差をつけるかが商売!同レベルならそうだけど、もしネスの技量が買われていたら定価10000ミルよりも高い値段でも仕事が来る!そうやって技術で儲けるか!質より量で儲けるか!そこからなんだ!」

ネス「なるほどっす!ちなみに妖怪族の武器制作はオーダーメイドなら50000ミル、そこから素材代やら諸々が乗ってるはずっす!」

パト「つまり、似たような工程で仕事してるとどうしても50000ミルは掛かるって話だ、ネスならどれくらい安くする?」

ネスはパトに言われて考える、そして

ネス「30000ミルで出来るっす!だからいつも30000ミルから見積もり作ってるっすよ?」

パト「ばかもん!馬鹿正直に30000ミルにするやつがあるか!出来るとわかっていてもある程度幅見ておくんだよ!30000ミルはライバル店との値引き駆け引きが発生した時の最低金額!家電製品の店の仕組みは大体そうだ!覚えておけ!!」

ネス「家電商品が何かわからんっすけど了解っす!!」

パト「とりあえず48000ミルだ、なら普通に仕事をこなすだけで18000ミルの売り上げだ、そして材料費!ネスはこれをどう算出してる?俺の時もそうだったけど値段を把握してるのか?」

ネスは得意げな顔で話した。

ネス「それはもう間違いないっす!情報網ってやつっすよね!こんな辺境の地でもチラシは来るッス!その中から最安の材料を仕入れてるっす!これで間違いないっす!」

パト「情報の視野がせまーーい!」

パトが大げさな素振りでネスを否定する

パト「材料費を最安というのなら世界各国を巡れ!そもそもその材料の生産元は把握してるのか?そこからどれだけ材料屋が仲介に入ってるかで材料屋のランクも変わってくるんだぞ」

ネス「え、そうなんすか?てっきり材料屋が材料を制作してるとばかり」

パト「それは加工屋だ、素材を見つける人、次にそれを加工する人、次に加工した素材を材料として作る人、それを売る人、それを遠くまで売るための運送、支店、からの契約会社!そしてネスの元にだ!(パトも詳しくは把握してない)」

ネス「すっごい数の人が介入してるんすね!!」

パト「そうだ!つまりネスが買ってる材料屋は悪いけど、間に沢山の仲介が入ってる末端の材料屋、つまり凄く高い!!鉄の原価を知ってるのか?」

ネス「原価ってなんすか?」

パト「鉄本来の値段だよ!他のなにも介入していない元々の値段!大体1キロ単位だからそこから購入する時に大体何ミル上乗せされてるかわかるんだよ、鉄1キロ100ミルだとして材料屋の鉄塊10キロが3000ミル、はい!何ミル上乗せされてるでしょうか!」

ネス「えっと・・・1キロ100ミルで・・・10キロが1000ミルっすから・・・2000ミル上乗せされてるっす!」

パト「そう!つまり2000ミルも加わってるんだ、それで本題だが、ライバル店と差をつけるのは他の店よりも安くする方法があると言ったよな?」

ネス「うっす!」

パト「ここで大事になってくるのが、【どの段階で購入するか】だ!ぶっちゃけ鍛冶の仕事は知らないけど、加工された鉄じゃないと駄目なのか?無加工の鉄でも同じ武器は作れるんじゃないか?」

ネス「そうっすね、加工ならうちでも出来るっす!武器の修理やメンテナンスで加工はお手の物っス!」

パト「なら材料屋で買うんじゃなくて、一番最初の素材を見つける人から直接貰えばいい、違うか?」

ネス「・・・主・・・頭いいっすね・・・そうすれば仲介料金は掛からない・・・っす」

パト「そう、素材を見つけた人の費用が上乗せされる程度、つまり限りなく原価に近い値段で購入が出来る、そこから運送屋は必須だからそこさえおさえれば・・・ほら!安くなる!こうやって他のライバル店を差を広げるんだ!だけどこれは対人関係や交渉スキルが必須になってくる!、業界のタブーがあるみたいに、ルールを知っておかないといけない」

ネス「業界のタブーっすか?」

パト「ああ、もしネスみたいな職人が素材提供者から直接貰った場合、損する奴が沢山居るだろ?」

ネス「そうっすね、加工屋とか材料屋っすよね?」

パト「ああ、つまりそこらの連中の仕事を奪う行為になる、つまり敵が増える、素材提供者や運送屋にとっては関係ない話しだけど、それでいい気がしない奴らも居る、だからそういう争いにならないように業界の間で暗黙の了解があったりするんだ、だけどこっちも商売、破っても問題ないルールはバレない程度にやれば良い、馬鹿正直にやってたらいつまでも貧乏経営者だ」

ネス「なんか悪っすね!でも安くなった材料をそのまま見積もりにしたらバレるんじゃないっすか?」

パト「馬鹿正直に見積もりにしなくていいんだよ、そうだな、材料屋で買えば3000ミル、だけどネスは1000ミルで購入できた、なら大体2800ミルくらいで見積もりに書けばいい、詳細は黙って居たらいい」

ネス「成程っす!そうすればその分の金額はうちの儲けになるんすね!」

パト「そうだ、これで工費と材料費の話は認識できたか?」

ネス「えっと・・・認識は出来たんすけど・・・情報がかなり必要になるんすね」

ネスは頭を抱える。

パト「そうだな、しかも素材の原価だってその時その時で価値が変わる、常に一定じゃない、素材提供者は価値がある時に売れば儲け、だけど材料屋みたいにいちいち値段を変えれない店からすると赤字、逆に価値がない時に売れば赤字、だけど材料屋みたいな店は儲けだ、何故かもうわかるよな?」

ネス「入ってくる材料の値段が違うからっすか?」

パト「そうだ、さっきも言ったけど素材提供者から色んな人が仲介して材料屋に届く、つまりそこから上乗せされた最終金額が材料屋の手元に来るんだ、だけど材料屋ももちろんライバル店は居る、つまり安い方が売れる、そしてコロコロ値段を変えてしまえば客も減る恐れがある、普通は変えるんだけど、やっぱり決まった定価で取引したいからな、それを毎度変えられたら客側は溜まったもんじゃない、そうだろ?」

ネス「1000ミルだったものがいきなり高騰で1500ミルになったら泣くッス・・・」

パト「だから基本値段のバランスって凄く繊細で見極めが難しいんだ」

ネス「頭がこんがらがってきたッス・・・」

パト「後少しだ、頑張れ妖鳥」

パトはネスの頭を軽く撫で、労う。

パト「工費は妖怪族の中で普及している定価額を知る、材料費は原価に近い安い経路で購入する、後は何かわかるか?」

ネス「え、まだあるんすか?」

パト「この工房や工具はどうやって維持するんだ」

ネス「あ~~なる程っス」

パト「この工房だって消耗品だ、使い続ければ綻びが生まれる、数年経てば壊れもする、つまり、この場所や環境で仕事をするための費用を乗せないといけないんだ、例えるなら祭りの屋台で買う物だな、あれらが高いのはその場所を使わせてもらっているという場所に費用も入ってる、原価、人、場所、それらを計算した結果、普通のスーパーよりも高い値段で設定されてるんだ、自動販売機だって原価から場所や電気代とかの維持費、税金が乗って今の値段に設定されているんだ、それくらい場所に掛かる費用というのは大事って話だ」

ネス「成程・・・全然考えてなかったっす」

パト「ちなみにこの場所って実際の所維持費は掛かってないのか?」

ネス「妖怪族は自分達の村や家族、縄張り内で独自のルールを作りたがるっすからね、園自体に収める税額は一定で決まってるだけでそのほかは関与されてないっす」

パト「その税金って何に使われてんだ?」

ネス「妖怪族の都市じゃないっすかね、知らないっすけど」

パト「つまり一定の税金を納めれば特になにをしてても良いってことか、それでその税金の金額は?」

ネス「時間の概念が場所によって曖昧っすから、一人生涯5億ミル収めれば支払い義務は終わるっす」

パト「5億ミルって、妖怪族の寿命って何年?」

ネス「さあ、誰も死なないっすからね、うちも14歳っすし、妖怪は自然現象で生まれるのが殆どっすから親なんて概念もないっすから、種族事に違うんじゃないっすかね?ただ聞いた話によると死んでも税金が払い終えて居ない場合、無理矢理蘇生させられるらしいっす、死にたいなら税金を払ってから死ねってことっすね」

パト「死ぬことすらも許さない税制ってヤバいな」

パトはそう言いながらネスの寿命を人間とは違うとわかっている状態で大体100年と換算して、地球の感覚で考えたところ年約500万払わないといけない計算だった、1000年~2000年生きるのなら丁度いい数字になるため、恐らく寿命1000年くらいを基準に考えているのだと考えていた。

パト「少なくともネスは1000歳は生きるよ、よかったな」

ネス「え、あと986年も生きないといけないんすか?生き地獄じゃないっすか」

パト「ちなみに早く死にたいなら沢山稼げよ、ちなみに先月は何円税金を納めたんだ?」

ネス「2万ミルっすね、あまりにも生活品が買えなかったっすから本来収めるはずだったお金がなくなったんす・・・」

パト「まだ1000年以上は生きないとだな」

ネス「世知辛い世の中っす・・・」

・・・・・・
ネスはパトに言われた事をメモにしていた。

パト「まあ、仕事があるのはわかるけど、さっきも言った通りタイムリーな情報が商売では必須だ、少しでも古いとすぐに置いて行かれる、俺も最近起業したんだけど、そこらあたりは琴歌や月花が凄いから俺も全然なんだ」

ネス「奥が深いんすね・・・」

パト「あとはネスには必要ないかもだけど、宣伝費とか、経費だね、宣伝は「自分はこういう仕事をしてます!こういうサービスをしています!」ってアピールするための費用だね、もちろん効果は集客だ、客が居ないと商売は成り立たないからね、まずは知ってもらう事から始めないとスタート地点には立てないぞ、次に経費、さっき言った道具とか消耗品、場所代は経費として計算するんだ、年でこれだけ取るって決めたらそこからおおよその件数に合わせて計算して乗せておくんだ、うちの国だとそこの基準があって面倒くさいけど、妖怪族の国なら問題ないだろうし」

ネス「成程っす、ちなみにどんな感じっすか?」

パト「そうだな、地球感覚で言うと年10万を経費として持っておく場合、月15件仕事すると考えて12ヵ月で合計ノルマ180件、だから10万から180を割って、役560ミル、つまり最低でも1件に560ミルを経費で乗せておけば問題なしってことだ、多すぎるのは別に売り上げになるから問題ないし、こんなもんだろ」

ネス「成程っす、一度これで見積もりを変えてみるっす!」

ネスがパトから貰った案件の見積もりを作り直してみた。

パト「ネスにだけ特別扱いできないからここからは自分でやるんだぞ、贔屓にして他の妖怪族が俺と契約しに来てくれたらそれはそれで凄く楽だからいいけど」

ネス「・・・それは今は辞めてほしいっす、独占したいっす、この繋がりはちょっと・・・」

ネスは走らせていた筆を止めた。

パト「別に今は考えてないけどそうはいかないよ、いつかはこの世界全員と契約して力を手に入れないといけないわけだし」

ネス「そうっすね、我儘だったっす、でももし他の妖怪族と契約したらうちみたいな根暗とは関わってくれないと思うと・・・辛いっす」

ネスは少し泣きそうな顔で俯く、パトはこういう反応には弱く、言葉を詰まらせる。

パト(別にネスは嫌いじゃない、でも将来、契約する従者が増えた時、今みたいにネスと関係を続けてるかと言われたら自信はない、だって今でさえ専属神の子達でも関わりが少ない奴が出てきている、従属神なんてもってのほかだ、その中で帝園の従属なんてネルとかルナ、駐在契約をしている3人以外だとそこまで接点がない、俺の肉体は一つしかないからな・・・)

そんな事を考えるパトでもネスに応える

パト「辛いなら今回みたいに連絡してこい、そうすれば俺がいつでも召喚してやる、そこは我儘になってもいいんじゃないか?それも関係を繋ぐ努力は居るんだ、商売と同じでな、太客は逃さないのも技量だぞ!」

パトはそうネスを励ます。

ネス「そうっすね、せっかく約束を守って定期的に仕事をくれるっす、最近はあのティエル様から仕事を流してくれる事もあるっす、天使族や鬼族が客として一生居てくれる保証はないっすからね、頑張るっす!」

ネスはそう言いながら再度ペンを走らせる。

パトは笑顔でネスの仕事姿を見届けながら、月花から渡された【経営指南本】を読みながら自分の起業した会社が上手くいくように勉強に励む。

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